2015年08月01日

6月の観光地研修 3. アート編 (池田満寿夫&葛飾北斎)

6月のスタッフ研修、最後の紹介です。暑すぎてアウトドアを楽しむ気力もない、なんてときには涼しくインドアで楽しんでみませんか?


第3弾 アート編
 ~池田満寿夫美術館(松代) & 北斎館(小布施)~


……と銘打ったものの、美術館という制約上あまり写真を撮るわけにもいかず。盗撮や無断転載に踏みきる度胸もなかったので、今回は写真少なめテキスト多めの紹介になります。
見えないものを想像して見るのが芸術、ということでご容赦を。


6月の観光地研修 3. アート編 (池田満寿夫&葛飾北斎)

旧満州に生まれ、長野市で育ったアーティスト・池田満寿夫(1934 - 1997)の美術館は、前回のエントリで紹介した松代の中心部、松代城址公園と真田宝物館のあいだにあります。

ちなみに満寿夫はマスオと読みます。日曜夜の国民的アニメにて不動のポジションを確立しているフグ田さんを彷彿とさせるやわらかい響きですが、生真面目で不器用なところもある商社勤務のマスオさんと異なり、満寿夫さんは自我の思うままに多才な創作ぶりを発揮したアーティスト。
その肩書きは、国際的版画家、画家、彫刻家、陶芸家、芥川賞作家、エッセイスト、映画監督、などなど。いまで言うマルチタレントですね。先日、お笑い芸人の又吉が『火花』で受賞した芥川賞を、じつは満寿夫さんも『エーゲ海に捧ぐ』で受賞していたとは。アマチュア読書家のKeizoもこれには気づかなかった。

さて、いざ展示室に足を運んでみると絵画を中心に版画や彫刻など、さまざまな顔ぶれ。

どの絵もぱっと見の第一印象では原色を混じえたカラフルな色使いが目に飛びこんできて、ウォーホル?と錯覚。でもつぶさに眺めてみると、人の顔や企業の商品などを明瞭な輪郭をともないつつポップに着色しなおしてみせたアンディ・ウォーホルの作品群よりも、もう少し抽象的。白地の画面に赤・青・黄・黒の幾何学模様が跳ねたり漂ったりしている絵などは、ロシア出身の抽象絵画の祖・カンディンスキーの絵の、線や曲線や円たちが音楽にのってダンスしているかのような空気感をより小ぶりに、より華奢にしたような印象。けっして似ているわけではないんだけど。

そうかと思えば彫刻にいたっては、なんというか、筒状のねんどや箱型のねんどがPlayStationのゲーム・塊魂のようにぼこぼことくっつきあって、形容しがたい形のにょきにょきやぐにょぐにょになりました、といった感じ。

絵画、版画、彫刻と表現が多岐にわたっているうえ、絵ひとつとっても時期や作品によっていろいろな作風が試みられていて、展示室を出るころには、いわゆる代表作というものを定めがたい作家だなという印象を抱きました。
もちろん器用貧乏というにはあふれ出てくる制作意欲と発想があまりにも非凡だったからこその、表現者としてのキャリアをつらぬく旺盛なとりとめのなさ、といえるかもしれません。また先行の、そして同時代のアーティストの刺激を受けたと思わせる作品も多くあったので、これは誰の影響を受けたのかな?と推測しつつ眺めてみるのも一興です


6月の観光地研修 3. アート編 (池田満寿夫&葛飾北斎)

入口の受付の奥はミュージアムショップ。Tシャツやバッグ、ポストカードなど満寿夫グッズが購入できます。

そのほか地元の作家さんが手がけた作品も売られていました。写真を撮りそびれましたが、なかにはエジプト美術を思わせるとても素敵なティーカップとソーサーも。Miwaちゃんが釘づけになっていたのでオーナーとKeizoもどれどれ、と近寄ってみると、これはいい!と一同絶賛。ただし値段もなかなか素敵で、今回は泣く泣く購入を見合わせましたが。


6月の観光地研修 3. アート編 (池田満寿夫&葛飾北斎)

お次は松代をあとにして車で小布施へ、でもその前に腹ごしらえ、ということで途中の須坂でランチをとることに。長野市内外のカフェや飲み屋の情報に事欠かないMiwaちゃんが気になるお店をピックアップ、どれにするかいろいろうろうろ迷ったあげく、須坂駅からそう離れていない、旬菜古民家 ゆるり というお店に流れつきました。

木造りの落ちついた店内にて一同、メニューをめくると……ちょっと高い?どのお品も1,000円前後から、なかには2,000円を超えるものまで。声に出して言わずとも、みな同じことを考えているらしいことが沈黙から伝わってきます。さいわい日替わり定食(だったかな)が1,000円を切っていてお手ごろ価格だったので、3人ともそれを注文。やはりみな同じことを考えていたらしい。ところが日替わりは本日終了とのことなので、おずおず1,500円の海鮮丼を頼む一同。

結果的にこれが正解で、エビやトロなど海の幸が盛りつけられたご飯にもろもろのおかずがついて、ふだんは自炊生活を送るスタッフたちもちょっと贅沢な気分に。それにしてもまわりに海がない長野県でこんなにしっかりした海の幸が食べられるなんて、保存技術の発達はすごい、流通えらい、とテクノロジーに感謝しつつイカを噛みほぐすKeizo。長野で食べる海鮮丼、なかなか悪くないですよ。


6月の観光地研修 3. アート編 (池田満寿夫&葛飾北斎)

芸術鑑賞に必要な(?)栄養補給をぶじすませたあとは、いよいよ小布施の北斎館へ。

江戸時代の代表的な絵画といえば、浮世絵。そして代表的な浮世絵師といえば、葛飾北斎(1760 - 1849)。江戸に生まれ、江戸に没した画家の美術館がなぜ小布施にあるかというと、晩年の数年間をこの地に逗留した縁によります。
北斎と小布施とをつなぐ結び目となったのが地元の豪商、高井鴻山(たかい こうざん、1806 - 1883)。経営人としてよりも文化人としての才に恵まれた鴻山は、当時37歳の彼のもとを訪れた83歳の北斎の卓越した画才を見抜き、自宅に碧漪軒(へきいけん)というアトリエを建てて厚くもてなし、北斎に入門したそうです。並外れた才能をもつアーティストとその才能に理解を寄せるパトロンとのこの幸福な出会いは、レオナルド・ダ・ヴィンチらルネサンス期の芸術家たちとフィレンツェのメディチ家との関係がそうであったように、美術史という広大な砂浜のうえに消えることのない足跡を残してくれたようです。
なお、この高井鴻山の記念館も北斎館の近くにあります。小布施生まれの日本画家・中島千波(なかじま ちなみ、1945 - )の作品を収蔵しているおぶせミュージアム・中島千波館とあわせ、三館共通券が1,000円。北斎館以外も見てまわる時間がある方はぜひ。

さて北斎館、最近できたばかりの新館に入ってみるとなにやら建物のようすが和モダンでお洒落になっている。

受付を過ぎるとゆったりとした廊下がお出迎え。壁面には、北斎の生涯や歴史的なインパクトについての紹介文と浮世絵の拡大図がタペストリーとなって掛かっているのですが、これがまたえらくスタイリッシュな仕上がり。まるでTBSの情熱大陸やNHKのプロフェッショナルといった番組で現代のアーティストが取り上げられているかのようなキュレーション(情報の選択・編集・提示のしかた)は、万人受けする分かりやすさとかっこよさがあって新鮮でした。「浮世絵なんて古臭そう」と食わず嫌いのままでいる若い人びとにも、古びることのない北斎の魅力をきちんと発信し、送り届けることに成功しているように思います。

廊下の奥にある映像ホールでは「小布施と北斎」および「ジャポニズムと北斎」という、これまたセンスのいいドキュメンタリーが大きなスクリーンに流れています。どちらも北斎の魅力をひもとき作品の理解を深めるうえでの手頃な助けとなってくれるので、ちょっと足をとめてでもご覧になることをおすすめ。

展示室にすすむと北斎が小布施で描いた肉筆画や画稿を中心に、浮世絵の世界の一端を垣間見ることができます。

今回訪れた企画展「新館落成記念・北斎とその弟子たち―北斎絵画創作の秘密―」(現在終了)でいちばんの目玉は、学校の教科書にも載っているあの「冨嶽三十六景」の全46点の展示。あれ、冨嶽三十六景が46枚?そうなんです。当初は名前のとおり36枚だった作品が人気を集めたため追加で10枚が発表され、46枚になったとのこと。今でいう人気漫画の連載延長みたいなものか。
富士山を画面いっぱいに、あるいは遠景に配しながら、四季おりおりの自然のながめや人びとの暮らしぶりを活写した冨嶽三十六景シリーズ。富士山という題材はおなじなのに、絵によって一枚一枚こうも表情が違うとは。ひとつのものをたくさんの角度から眺め、描きわけることができたのは、まず画家の肉体上の眼が、ついで心の眼が、それだけすぐれていたからこそでしょう。この波のはじける感じいいね、この富士の赤は渋いな、この大工さんはなにをしているんだろう、と絵から絵へ視線がうつるごとにスタッフたちの会話もはじけていきます。

現状に満足することなく、生涯に引っ越し93回、改名すること30回、描いた絵は3万点。そんな北斎の履歴のなかでも驚かされるのは、「冨嶽三十六景」やその後の「富嶽百景」、「諸国滝廻り」といった代表作が、70歳を超えてから描かれたこと。

 「七十年前画く所は実に取るに足るものなし
 (70歳までに描いたものは本当に取るに足らぬものばかりである)

と述懐している「富嶽百景」のあとがきからは、一生を図画にささげた画家の並々ならぬ思いが伝わってきました。

老いてなお、というより老いてこその、観察の妙と創作の勢い。その飽くなき追求の姿勢は、描くことがそのまま生きることでもあった、まさに真正の画工(genuine artist)ならではのものでしょう。

   **

2つの美術館をめぐっただけの研修でしたが、みな気の赴くままにのんびりと鑑賞していました。のんびりしすぎて夜の当番だったMiwaちゃんが開店時刻に遅れかけるという事件もありましたが。

なお今回は行きませんでしたが、善光寺の隣にある信濃美術館・東山魁夷館では昭和を代表する日本画家・東山魁夷(ひがしやま かいい、1908 - 1999)の作品にふれることができます。
中学生のころ、学校の課外活動で信濃美術館に行ったKeizoは東山魁夷のよさが分からず、なんか地味な絵、との印象しか残りませんでした。でもいつのまにか大人になって、働いたり都会の忙しなさに疲れたりを経たあとになってようやく、その地味な絵のよさがわかってきた気がします。

善光寺に参拝したあと、東山魁夷が描きつづけた静かな世界にしばし足をとどめ、画家が実際の景色の奥に見ていたはずのものに思いをはせてみる。そんなゆったりした大人の休日も、たまにはいいかもしれません。



***スタッフ募集中***

住込みの方、募集中。

9月中旬から1人、9月下旬から1人。
通いの方はいつでも大歓迎です。

「英会話を実際に使って上達する」   スピードラーニングなんかメじゃない
「お金を使わずに長野で生活する」   ぜいたくせずに、料理できれば、出費0も可能
「食住の基盤とし、バイトでかせぐ」   長期大歓迎!個室です。
「野菜を自分で作り、自分で料理する」 畑もやるよー(希望者)

そんなことができます。

<近所の方、週1回(半日程度)からでもOKです。回数が少ないと無給ですが、得るものは多い!>
<住み込みは個室で。食材支給+月1万程度>
詳しくはwebsiteのスタッフ募集・紹介ページをご覧ください。



同じカテゴリー(スタッフ)の記事画像
6月の観光地研修 2. 松代
6月の観光地研修 1. 戸隠
初登山!
同じカテゴリー(スタッフ)の記事
 6月の観光地研修 2. 松代 (2015-07-24 09:55)
 6月の観光地研修 1. 戸隠 (2015-07-17 03:42)
 初登山! (2013-07-10 16:03)
 ヘルパー募集 (2012-06-22 15:27)
 スタッフ募集 (2012-05-03 07:29)

Posted by もりとみず at 23:40│Comments(0)スタッフ観光・営業案内
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

プロフィール
もりとみず
もりとみず
【近い・安い・便利】
長野市の玄関
   長野駅から徒歩5分


自由な安宿として旅に、ビジネスに
ドミトリー(相部屋)&個室(5部屋)

★公式HPはこちら
http://www.morimizu.net/

★FBページもあります
https://www.facebook.com/moritomizu?ref=hl


畑&ワイルドアウトドアツアーもあり
お気軽にお問い合わせください
QRコード
QRCODE
インフォメーション
長野県・信州ブログコミュニティサイトナガブロ
ログイン

ホームページ制作 長野市 松本市-Web8

アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 4人
オーナーへメッセージ