2015年04月04日

森と水スタッフの日常

住み込みスタッフ募集中!

……とはいったものの、実際に住み込みを始めるとどんな暮らしになるのか、心配な方もいるかもしれません。
そこでスタッフがふだんどんな生活を送っているのか、最近のある週を例にとって紹介します。

森と水スタッフの日常

週8シフト(うち1回は大抵ミーティング)ですが、まとめて休みたいときはその前後でシフトを消化しています。2~3日なら続けて休むことは簡単です。このときは日本人の住み込みスタッフが2人、通いスタッフ2人、オーナー、昼の掃除をする住み込み外国人ヘルパーが入れ替わる週でした。

では、スタッフZの朝・夜シフトの金曜日の生活を、本人に聞いてみましょう。


 スタッフZのありふれた金曜日


  ■ 眠い目をこすって @7:00

きょうは朝番と夜番を担当。今週は火~木と3日間も休みが続いたのをこれ幸いと、夜な夜な小説を読みふけってばかりいたのでそのツケで今朝は眠い。でも朝番があるおかげで体内時計が強制リセットされるのは健康にいい、はず。ぎりぎりまで布団との別れを惜しんだあと大急ぎでシャワーを浴びて着替え、開店時刻の7:30に間に合うよう仕事スタート。

森と水スタッフの日常 
住み始めたころの小ざっぱりした部屋。いまはあまりさっぱりしていない。


  ■ 朝番スタート @7:30

朝番の始めはまず館内チェック、そして玄関の開錠、リビングチェック。

洗面台の鏡を拭き、トイレットペーパーやシャンプーなどの備品を切らしていないか、トイレのスリッパが行方不明になっていないかなどを確認。たまにトイレのスリッパを履いたまま部屋に戻ってしまうお客さまがいるけれど、外国人の方の場合は文化の違い、日本人の方ならお酒の効能、それともかわいいスリッパには旅をさせよ?などと思いをめぐらせつつ正面玄関の鍵をあけ、7:30開店。

次にリビングをチェック。PCを起ち上げているあいだにコーヒー・紅茶・砂糖などの補充、キッチンの整頓。

雪がふった朝は玄関と裏口まわりの雪かきをすることも。以前、お隣の焼き鳥屋さんの雪かきを手伝ったらお礼に焼き鳥をごちそうになった。「雪は天から送られた手紙である」という名文句を残した雪の研究者がかつていたそうだけど、その手紙が美味しいひと時まで運んでくれるなんて、なかなか粋なはからいというもの。

森と水スタッフの日常
雪がふった翌朝の屋上にて。当時のヘルパー、スコットランド人のSが嬉々として柵を飛び越える。良い子はマネをしてはいけない。


  ■ 予約管理 @8:00

PCで予約管理業務。まずはメールチェック、受信トレイに予約のメールが何件か。たとえば森と水のウェブサイト経由での予約なら、Excelの予約ファイルで空室状況を確認、空いていれば入力、お客さまに返信、確定済みの予約を印刷してファイリング。

夜更かししたせいでまだちょっと眠いので、作業のおともにコーヒーと音楽でも。リビングのBGMはスタッフ次第、さらに気分次第で秋の空みたいにころころ変わる。今朝は学生のころから好きだった rei harakami を。彼の音楽は他のエレクトロニカと違い、電子音のなかにも人の情緒のようなふわふわとしたゆらめきが漂っているのがいい。


  ■ 朝ごはん @8:30

メールチェックがひと通り終わったので朝食を。もう一人の住み込みスタッフHは早起きなので、遅起きのZよりもたいてい先に済ませている。加えてZは食への感受性がいちじるしく乏しく、朝食は小学生のころからずっと食べ続けている納豆タマゴご飯。ただし小学生のころと違うのは、Hが初めて来たときから酵素玄米の文化を持ちこんでくれたおかげで炊飯器にいつも赤々とした酵素玄米があること。おいしくごちそうさま。


  ■ お客さまのお見送り @9:45

お客さまが玄関から出る音を聞きつけるとその都度お見送り。1組はチェックアウトするドイツ人のカップルで、モンキーパークこと地獄谷野猿公苑へ。もう1組は今夜も連泊するノルウェー人の女の子たち、なんと先日延伸したばかりの新幹線で金沢まで日帰りで遊びに行くという。

外国人の旅行客はJRパスという、新幹線や特急もふくめてJRに乗り放題の切符を使って、ほんの1、2週間のあいだに北は北海道から南は九州まで、日本中を旅する人がけっこう多い。じぶんもJRパスを使えたら金沢までふわっと散歩にいけるのに。

ともあれ、"Have a good day!"

森と水スタッフの日常
こちらはカンガルーの国からモンキーパークへ。館内でもずっとカンガルー帽をかぶっていた。


  ■ 掃除 @10:30

全員のお客さまを見送ったあと、玄関をいったん施錠。森と水ではチェックアウトする方も連泊の方も、お客さまには10:30から16:00までのあいだ、いったん外に出ていただくようお願いしている。お客さまがいろいろな場所で充実したひと時を過ごしているあいだ、スタッフは客室や館内の清掃、ときにミーティングなどを行う。2、3階の掃除は昼番のオーストラリア人ヘルパーLにまかせ、朝番Zは1階を。


  ■ 昼ごはん @12:00

掃除を終えて朝番終了、そのままランチタイム。きょうのおかずは昨夜の残りもののシチューと、通いスタッフのKちゃんがくれた謎の漬け物。大きい葉ぶりからするとキャベツ?だとは思うけど、Zは食材についての理解にひどく乏しいので、「おいしい漬け物」と大雑把な認識でやり過ごす。おいしくごちそうさま。

ちなみに外国人ヘルパーLは完全な菜食主義者 vegan で、ふつうの菜食主義者 vegetarian が食べる乳製品や卵を彼女は食べない。鶏肉の入っているシチューは避け、かわりにサツマイモをほくほくの焼き芋にして食べていた。 Looks delicious! と言ったら Do you want some? とありがたいお言葉が。おいしくごちそうさま。

そういえば今朝からHの顔を見かけない。裏口の定位置に彼の靴がなかったので、朝からどこかに出かけているのだろう。

森と水スタッフの日常
食欲旺盛なスタッフがそろうと、パスタが噴火寸前なくらい山盛りになることも。


 ■ ちょっと休憩 @13:30

夜番の開始まで小休止。いったん部屋にもどって読みかけの小説を読み終えてしまう。19世紀ロシアの作家、ニコライ・ゴーゴリの『鼻』。鼻が長いのを嘆くのは芥川の『鼻』だけど、こちらは鼻が文字通りなくなるのを嘆く話。ある日突然じぶんの鼻がなくなっているという、ふつうならありえないはずの出来事そのものには頓着しないまま、当の本人はなくした鼻をさがして取り戻すことのほうに腐心する。

ひさびさに読み返してみたけれど、ある朝突然じぶんが虫になっているカフカの『変身』といい、「ありえない」を、「ありえる」どころか「ある」としてさらっと描いてそのまま読者のまえに差しだしてしまう文学の想像力は、やはりすごい。


  ■ 夜番スタート @15:30

などと文学青年ふうの余韻にひたったあと、現実の再開。昼番からの引き継ぎをすませたあと、16時の開店にあわせてまずは館内チェック。掃除中に換気のため開けていた窓を閉め、きょうチェックイン予定の客室にちゃんと布団やシーツが人数分用意されているか、シャンプー・トイレットペーパーなど補充品に不足はないか、いま一度確認。特に問題なく、玄関の鍵をふたたび開けて16時開店。


  ■ チェックイン受付 @17:00

リビングのPCでメールをチェックしていたら、玄関ドアの上につけてある鈴のカランカランという音が。廊下に出ると、黒髪だけど日本人ではなさそうな顔立ちの、大きなバックパックを背負った青年がひとり。日本語よりは英語かな、と当たりをつけて "Hello!" と声をかけると、青年も "Hello!" と、日本人のハローとは違う流暢なひびきの Hello を返してきた。つづけて予約の有無を確かめるべく、 "Do you have a reservation?" 。ネイティヴスピーカー並みに英語を使いこなすにはまだまだ程遠いけれど、さしあたりの業務フレーズは舌先からすっと出てくるようになった。 "Yes, I booked yesterday." と笑顔ともども返事が。

フロントにご案内し、パスポート番号を控えさせていただいたあと、お会計、つづけて館内の時間割や設備の利用方法についての説明。別々のお客さまが立て続けにお見えになった際などは時間がなくて必要最低限のやり取りですますが、この時は時間があったので、どこから来たの?いまは学生?などと訊いてみた。予想どおり日本人ではなく台湾の大学生で、建築の、構造ではなく意匠のほう、それもお寺などの伝統建築よりは東京都庁舎や金沢21世紀美術館といった現代建築に興味があって、日本中の有名な建築物を見てまわっているとのこと。じぶんも学生のころ、建築学科の友人たちからいろいろ話を聞いて建築を知ったかぶった時期があったので、もちろんいまだに知ったかぶったままだけど、館内説明そっちのけでついつい話に花を咲かせてしまった。

森と水スタッフの日常
いちばん若い、というか幼いスタッフのモーリーちゃん。お客さまのチェックイン時にベッドシーツの説明をするのと目を開けながら寝るのが仕事。外国人に大人気。


  ■ 晩ごはん @19:00

18時ごろ、玄関のカランカランという鈴音とともにHが戻ってきた。なんでも県庁の裏手のほうにある温泉・うるおい館に朝早くからずっと行っていたらしい。朝と昼と、それぞれのんびり時間をかけて湯船につかり、合間の時間は食堂でカレーを食べたり本を読んだりしたそうな。それは気持ちよさそうな一日だなあ、と思いつつも早起きと無縁のじぶんはきっと朝風呂ならぬ朝温泉のすがすがしさを知ることはないだろう。

という後ろむきな感想を胸に、ところできょうの夕飯は何にする?昨日のシチューは昼に食べちゃったけど……あ、魚あるから魚にする?あ、それいいね!ということで一緒に夕飯をつくり始める。しかしZは皿洗いは得意だが調理はいまいち、というのも野菜を切ったりフライパンで炒めものを炒めたりといった動作そのものはどうにかなるのだが、この料理を作るためにはこの食材とあの食材をこれこれの手順で調理して、といった全体的な観点や段取り、作業のプランニングが致命的に欠けている。なのでたいていは、このあとどうすればいい?と料理のできる男Hに指示を仰ぎながら、なけなしの調理補助につとめることにしている。

ともあれそうしてできた焼き魚も白菜のスープも、素材の味わいをそのまま活かしたシンプルにしてベストなできあがり、だと思う。ちなみに白菜は、元スタッフのRちゃんが森と水のみんなにといって届けてくれたもの。彼女は森と水を卒業後、農業の道にすすんでいまは農園でいろいろな野菜を育てている。白菜そのものがおいしかったのはもちろんだが、じぶんたちのよく知っている、顔の見える人から直接いただいたものであるというのはやはり安心感があるし、なにより嬉しい。Rちゃん、おいしくごちそうさま。


  ■ お客さまと団欒 @20:00

夕飯を終えて後かたづけをしていると、先ほどの台湾の学生さんがリビングにやって来た。あすは長野県のへそ、どころか日本のへそと呼ばれなくもない諏訪湖に行って、日本を代表する建築家のひとり、伊東豊雄が設計した諏訪湖博物館・赤彦記念館を見てくるとのこと。あの博物館のなめらかで細長の流線は、金属製の丘のような、あるいは寝っ転がったクジラのお腹のようなぱっと目を引くフォルムだけど、やかましい主張はなくて湖畔のたたずまいに無理なくとけこんでいるよね。というような意味のことを本当は伝えたかったのだが、かわりに伝わったのはじぶんが彼ほどには英語をたくみに操れないということだった。

言葉の壁にめげそうになりつつ、せっかく諏訪に行くのなら、ということで諏訪湖畔に4箇所ある諏訪大社と、そのうちの下社春宮のそばにある万治の石仏をおすすめ。万治の石仏の、あのなんともいえない可笑しみをそなえた穏やかなたたずまいは一見の価値あり。英語ではニュアンスをうまく説明できなかったのでかわりにグーグル画像検索で見せたら、にんまり笑いながら "Awesome! I'll go there!" とのこと。ぜひぜひ、 "You should!"


  ■ 夜番終了 @21:15

お客さまやスタッフとゆったり語らいつつ、チェックイン受付、予約やキャンセルのメール、お客さまからの問合せなどをその都度こなし、閉店時刻の21時までに全員のチェックインが終了。玄関に鍵をかけたのち、本日の会計を締める。スタッフノートの会計欄に記入した金額と、実際の現金がきちんと一致しているか。

Zは几帳面な性格にくわえて計算が得意なので会計がずれることはあまりないが、なぜかきょうは200円だけ合わない。お釣りを渡し間違えた?あるいはお代を受けとり忘れた?と一瞬ひやり。でもたいていはノートへの記帳漏れが原因。案の定、ドリンク販売のお茶100円とレンタルタオルの100円をノートに記入していなかった。いくら得意だからといって天狗になるのはよくないな、と反省。もう一度やり直し、ぶじ一致。

胸をなでおろしつつもろもろの戸締りを再確認し、リビングのお湯ポットなど補充もの、メールなども最終チェック。PCの電源を落として夜番終了。その後、もう少しだけお客さまとの会話にくつろいだのち、22時すぎに自室にもどる。

森と水スタッフの日常
いろいろなお客さまとのふれあいが、やっぱりいちばんの醍醐味。


  ■ ぬくぬく読書 @23:00

あすも朝番だからそろそろ寝なきゃと思いつつ、布団にくるまってぬくぬくだらだら読書。以前、ヘルパーLと入れ替わりで森と水を卒業したタイ人のヘルパーGに、タイでおすすめの作家はだれ?と尋ねたらしばし黙考したのち教えてくれた、ピラ・スダムという人の短編集。邦訳されているのはこの短編集のみのようだけど、市立図書館にあったので借りてみた。

その日の食べものにも事欠く乾季のさなか、ただひたすら慈悲の雨がふるのをこいねがうタイの農村部のひもじい暮らしぶり。欧米化がひずみをともないつつ進展し、金と労働、欲望と失望が渦巻く首都バンコクの混沌とした空気、ないし空虚。幼少時からの貧苦に折れることなく英語圏の先進国で高等教育を受ける機会をつかんだものの、あるいはつかんだからこそ、故郷の美しく貧しい大地に住みつづける父母たち農村民のありかたを尊敬と批判のまなざしでじっと見据えてやまない作家自身の、ためらいと覚悟。

大まかな空気感を要約すればこういう感じの内容ですよ、と言えば言えるのかもしれない。でも要約なんてできないな、と読み終えるたびにいつも思う。たった200ページに満たない一冊の内側でさえ、多くの人間がそれぞれのしかたで息を吸い、働いては悩み、傷ついては笑い、後悔してはすすんでいく。そのすべてを行儀よくまとめあげ、10秒で飲み干せるスポーツゼリーさながらの手軽さでだれかに伝えることなんて、少なくともじぶんにはできそうもない。


  ■ 就寝まぎわのぐるぐる、そして @0:30

とすれば一冊の外側においてはなおのこと、たとえそれがいつもと同じありふれた金曜日にすぎなかった(ように感じた)としても、こうして丁寧にふりかえってみればいろんな思いや交わりがその都度あったなと、そろそろ重たくなってきたまぶたの裏側であらためて思う。出会ったばかりの人々との他愛のないおしゃべりや、なんということのない別れ際の間合いの、不思議な忘れがたさ。こういうあいまいなもろもろを一行や一言でパッキングしてしまうような便利な言葉をじぶんは持ちあわせていないけど、それでいいかなという気がする。生活を要約することなんて、だれにもできないから。

と同時にできれば森と水も、なにか特定の色に染まったりひとつの雰囲気でまとまって閉じてしまうのではなく、雑多でごちゃごちゃしているけどそれがそのままでいいと感じさせてくれるような、要約の彼方にある場でありつづけてほしい

思考がぐるぐるしてきた。きのうはちょっと寝不足だったし、あすも朝番と昼番が待っている。目を覚ましたら懲りずにきっとまた、ぎりぎりまで布団との別れを惜しむだろう。そしてLがくれるかもしれない焼き芋を楽しみにしながら掃除にはげみ、きょうはなに食べる?とHに訊きながらお客さまと話し、Gのおかげで手にとった短編集を読み終えて、きっとあすの夜も、ぐるぐると眠りに落ちていく。


  **


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Posted by もりとみず at 20:24│Comments(0)スタッフの紹介
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